作詞


I Dream, I Sleep 夢を見るとき、眠る時 2009年 ジャネット・ウインターソンのdisappearance 1(消失1)による 作詞:高橋鮎生


夢を見るとき、眠る時  (翻訳:Ayuo)

ジャネット・ウインターソンのdisappearance 1(消失1)による

(鳥の声が聞こえてくる。)
Ayuo:
空には不思議なことが いっぱいある。
芝生に寝ころんでいると、雲がちぎれてゆくのが、はっきりと見える。
Reki  (映子):
『ねえ。二人して並んで、こうやって目を閉じて、いっしょに居眠りしても、同じ夢を見れないなんて変な事ね。』
Ayuo:『ふむ』
Reki  (映子):『どうしてかしら?』
Ayuo: 僕はちょっと考えて言った
『それは目を開いたときにいつも同じ夢を見ているからだよ。』

今日は夢を一緒に見るというテーマでおおくりしたい。

Reki :
朝、起きて見ると、部屋が一つ、なくなっていた。

僕は一人者。ガールフレンドがいる。僕は中々いいアパートを借りている。
キッチン、ダイニング・ルームと寝室がある。
そしてこの寝室で、カーテンを閉めて、或いは開けたまま、
時には朝中、時には一日中、暖かくして眠りを楽しんでいる。

Reki + Yoshie:
いつ頃からそうだったって?

(宇宙のイメージ)
Yoshie:
僕が生まれる前からさ。母のお腹のなかで小さな足をけっていた頃から。
玉のように丸くなって、包まれて安全な僕。光輝くスタジアムに入場する前の眠り。
生まれた時、僕はエジプトのファラオのように半球形で青かった。
とがっていた。ピカソのように。
線と平面で出来たキュービズムのベイビーだ。まだ息をしている人間ではなく。神の建築物と糸でつながっていた。
小さなあえぎと液体の目。見てみて。ここにいるよ。ここに眠っているよ。
のらりくらりから、はいはい、よちよち、まっすぐ立って、歩く人、走る人、高く飛ぶ人、
宇宙に広がって、僕は眠った。自然の事だった。横になって、目を閉じて眠った。
みんなも僕が眠る事は知っていた。僕の両親も。教会の司祭も。

Reki, Ayuo, Junzou + Yoshie: それから。

Reki, Ayuo, Junzou + Yoshie: それから。
(Voice Improvisation based on 
Sssss 
Reee
Ka
Ra
Ssso
Re
Kara)

Ayuo:
それから。物理工場で素粒子の仕事をしないかとオファーされた。
原子事務所で電子の仕事を、ラジオ局で周波数の仕事をオファーされた。
光線銃の光線にはぴったりだとよく言われた。
どうしたんだ、君は。ちゃんとした仕事をしたくないのかね!
僕は浜辺のフーテンになって、自分の波動機能を研究したかったんだ。
僕はいつでも海が好きだった。

Junzou:
最近の求人広告は、『眠らない人』ばかりを求めている。
眠る事は汚く、不衛生で、ぜいたくで、他人に対して失礼な事だとされている。
公的な場所には全て眠りを禁じると書いてある。公園のベンチで短い昼寝をしても一万円の罰金を取られる。
自分の家で眠る事は許されているが、新しいベッドは、マットレスの中にパーソナル・アラーム時計が組み込まれてなければならない。
ベッド・チェックされた時に、鳴らないアラームを持っているのが発見されると、また一万円の罰金が取られる。3回罰金を受けると、一年間眠る事が禁じられる。

Ayuo:
新しいベッドを持っていない。初めて彼女が僕のアパートに来た時、僕の持っているようなベッドは見た事がないと言っていた。

(アブストラクトな部屋や夜のイメージ)

  Yoshie: 『わー。これアンティーク?』
  Ayuo: 『アンティーク好き?』
  Yoshie: 『まあ、すごく。。古いじゃない。』
  Ayuo: 『これが僕のベッド。たった一つの。』
  Yoshie: 『何のために使うの?』
  Ayuo: 『ここで眠るの。』
  Yoshie: 『特別な時に?』
  Ayuo: 『毎晩9時間か10時間。』
  Yoshie: 『毎週でしょう。』

  (Reki + Junzou: Voice Improvisation based on  Sleep
  Sssss
  Leee
  Eee
  Pu  pu, pu
  Dream)

  Ayuo:   
  彼女を僕の腕の中で抱いた。
  今夜、
  明日の夜、
  やさしい星がかがやく夜に、
  よかったら君と一緒に、
  星とともに暗闇につつまれながら。
  一緒に眠ってくれる?

  Yoshie:
  『一緒に寝転がって欲しいという意味なの?みんなにも私たち一緒に寝転がっているかって聞かれるのよ。』
Ayuo:
『いや。一緒に眠る、ということ。』
彼女は心配になってきた。ひょっとしたら、こいつはとんでもない奴かもしれない。

Yoshie: 『一晩に9時間も10時間も?』
Ayuo: 『そう。』と僕はうなづいた。今にでも眠りそうな顔をしながら。
彼女は帰った。僕は『いねむり』というアンダーグラウンドの雑誌に広告を出した。“ガールフレンド求む。ベッドを持っている人。”

Ayuo:
僕はお金持ちじゃないけど、僕の姉はお金持ちだ。彼女は自分のキャリアのために眠るのをあきらめた最初の何人かの一人だった。彼女は僕の事を心配している。

ある晩、姉は電話で『お医者さんに行って起き上がる薬をもらいなさい』と言った。姉は僕に仕事を提供しようとした。僕の新しい仕事については言えなかった。お医者さんの処方箋で『いねむり』雑誌が買える仕事だ。

(ハープと朗読)
Reki: 
今日の朝、新聞を買ってから、公園に行く事にした。
僕は早く歩いて行った。朝食の休みを取っている、死んだ目をした群衆の間をわざと早く歩いて行った。
さわやかな草の丘に到着するまで。
誰もここには来ない。目的もないし、理由もない。ぶらんこもなければ、カフェもない。ベンチさえもない。
僕は草の上に身を投げ出して雲がぶつかり合うのを見ていた。朝の空が割れたり、くっついたりしていた。
僕の体はリラックスして、思考する心が分裂してゆく。努力なく、目的もなく、再生しだす。
眠りに僕を連れ去って行った。

  Reki, Ayuo + Yoshie: 僕は一日の内の、ある一瞬の夢を見た。
  Ayuo: 一音が鳴って、消えた。
  Yoshie: 一つの響き。つけが回って来る。
  Reki: 消えた。

  (タイコと朗読)
(早いカットを使ったアブストラクトなイメージ)
Reki: 
僕は乱暴に起こされた。乱暴過ぎた。公園の管理人が僕をするどい棒で起こした。まるで動物園の猛獣のように。僕が目を開けると、雲は消えていた。
灰色の顔。汚い制服。やっとの事で開いているまぶたと硬く握っている違反の切符。
みんなはおぼえている?、公園の管理人がゴミを突っついたり、砂場にいるお母さんたちと話していた日々を? もうそんな事はなくなった。このやっかいなパトロールは人を気絶させるスタガンや無線機を持っている。公園にいるホモセクシュアルや、眠っている人々を一掃する。最近では公共法律公務員として呼ばれているようになった。
僕の側にいた公務員は不幸にも、急に倒れた。突然の出来事だった。彼は罰金のコードをパンチ・インしていた。その時だった。急に草の中へ、顔を前にして、倒れた。僕は彼をひっくり返して見てみた。僕は殺人罪で捕まっちゃうかもしれない。
死んでいなかった。彼はいびきをかいていた。
丁寧に彼の帽子を目の上までおろして、
彼の回りに立ち入り禁止の柵をプラスチックの細い棒やひらひらするテープで作った。
丘に戻った時に、振り返ってみると、 管理人の頭の周りに、薄い青色の沈殿物が見えた。
こうした事は夢を再び見る時におきると聞いた事はあったが、実際見たのは、初めてだった。

Ayuo:
僕は夢を見る人。IDカードには国家公務員と書いてある。だから、なるべく、礼儀正しく夢を見る事にしている。
みんなが夢を見る事が出来ないから、その代わりに僕が夢を見る。夢を見る事が僕の仕事で僕の夢は電子的に記録され、
町中のドリーム・ポイントから放送される。眠らないライフスタイルが開拓されるとすぐに、人々は夢の励ましがあるともっとよく働くと発見された。
心臓と手首にパッドを付ければ、数秒で体は眠ってしまうが、夢は見ない。
僕は夢を見る事が出来る。
みんなも見たかったら、ヘッドセットを付ければ、あと一時間で昨日の僕の夢が見られる。

Yoshie: 『あなたは仕事として夢を見る事をやっている人ですか?』
Ayuo: 『そうだ。そしてあなたは夜中に僕に電話している。』
Yoshie:『失礼しました。正式な職員だと知らなかったもので。』
Ayuo: 『無料で配っているディスクをお送りしましょうか?』
Yoshie: 『お願いします。封筒に、"プライベート"と書いておいてくださいね。』


Ayuo:
"プライベート" か。
僕が時々行くスリープ・バーもそんな場所だ。
夢の神の洞窟という場所で、暗くて、静かで、ベッドがたくさんある。そこに夢を一緒に見る相手を見つけたい、といった期待を持って行く。懐中電灯を持って、良さそうな顔を捜す。問題は起き上がった時に仲良く出来るかだ。
今夜はスリーピング・ビューティーというスリープ・バーに行く事にした。そこには若い人がたくさん集まっている。通りがかりに、一時間だけ立ち寄る人もいる。
ここなら相手を見つけられるかもしれない。話しながら、夢を見る。夢を見ながら、話す。時計はたくさんあっても、時 間がない。

  Yoshie:
僕の夢の中の都では道はどこにも行かない。というか、道は世界のはじっこから無限の宇宙につながってしまう。
僕の足の下には空気しかなくなる。地図もなく、どこに行けるだろう?どこにでも行けるとなった時、人はどこに行くだろう?
僕は夢を見た。僕は町の広場にいた。四つかどの内、3っには大きな家が立っている。4つ目のかどに立っている家は表面だけの偽りの家だった。そのうしろにはパイプや排気孔(はいきこう)や地下鉄の部屋がある。
地下鉄があるところに下りたい。電車の音やかまたきの男たち(火夫かーふ)の声が聞こえてくる。
地下鉄に降りるたった一つの方法はガラスでできたマンホールの下にあるハシゴを使う事だ。
しかし、マンホールを開ける事が僕には出来ない。
ガラスを割ればいい事かもしれないが、そうしてはいけないと僕は知っている。
大きな家の一つから女の人が出て来た。女の人は言う『あっちへ行け!』僕は地下鉄について女の人に聞いてみる。
『もう使われていない。明日工事の人たちがやって来る』と言われる。
僕は絶望的になった。もしもマンホールの上に部屋が作られてしまったら、
どうやって、おりるのか?僕は地上を動物のように4つんばいになって走りまわりながら、
なんとかこの地上からおりられる動物の穴を探していた。
(ダンスとタイコのデュオ あるいはメドレーでLeylat Hob) 
(踊りを中心とした映像)

Reki,:
僕の夢は常に監視されている。反社会的な要素がないようにチェックされている。
たった今。
ここで。
私たちの間で起きている事だけが本当の事だ。

Reki, Ayuo , Junzou+ Yoshie (Voice Improvisaytion): 
私とあなた。
あなたと私。
君と僕。
僕と君。

Ayuo:
いっしょに眠って!

スリーピング・ビューティーでホットミルクにブランディーを入れたドリンクを注文して、まくらの部屋に入った。まくらの部屋は暗く、やわらかく、夢を映すスクリーンが壁にある。僕が部屋に入った時、僕の夢を上映していた。本当の夢とは少し違っていた。『本当はこう終わらなかった』とつい言ってしまった。『これは本当は悪夢だった。楽しく走り回っている夢じゃなかった。放棄された土地から出られる穴を探している動物だった。』
何人かの女性が立ち上がって、ぐーぐー・バーに行った。僕ははっきりと起きている女の人と二人っきりになった。彼女は自分のハンドバッグの中にごそごそと手を突っ込んでいた。

Reki: 『眠り薬いる?』
Ayuo: 『要らない。眠りたいわけじゃない。』
彼女は残念そうな顔をした。まくらに頭を乗せて、スクリーンを見ていた。
夢はもう終わっていて、コマーシャルが流れていた。
ゴーというシリアルを朝食に食べれば元気になる、というような事が聞こえてきた。
彼女の隣に行って、キスをした。彼女はびっくりした顔をした。こういう事はこういったバーでは禁じられている。
その夜、一緒に腕を組んで帰った。海辺で一緒にレストランを開こうかと話し合った。
ホリデイ・リゾートは政府から眠ってもいい場所に指定されている。
一つの問題は、そういうところではみんなが疲れていて、あまり食べなくなるということ。8月は2週間静脈注射を打つ。
僕はラッキー。
僕は夢を見る人。
彼女にそれが分かったかどうか。それから、中々口にしにくい質問を聞く時になった。
ためらいながら、聞いた。
『一緒に眠ってくれる?』

(宇宙のイメージ)

  きみのねむるすがた           by  Ayuo
  Reki:
  きみのねむるすがた
  わたしはきみをみている
  きみのほっぺた、 やわらかいくび
  きみのこえ
  あまいたくましさ
  かおをきみのなかへおして

  きみのねむるすがた
  きみのうつくしさを
  息にする きみの息とともにうごく
  わたし。。。。。よんだ?
  いいや
  それはそとの木々の音
  外でとおる車の音

きみのねむるすがた
ゆめのなかの水は青くおどる
植物的にいつまでも泳いでいる
おなじまくらはかなしくみえる
わたしときみのちがいをかたる

(宇宙のイメージ)
Ayuo:
夜のカーペット、星のカーペット、月のランタン。月にいる人が寝ている私たちを、見ている。シリウスが彼の足元にいる。
惑星は太陽系の体。私たちも同じ。私とあなた。君と僕は生命の回りを回る長円形の天体にいる。私たちが欲しいのは生命。しかし、あまり近くに行くと、生命の強烈さによって燃え尽きてしまうかもしれない。これは生命の気と呼ばれている。そして、その通りだ。若枝をねんどから押し出す力がある。
赤ん坊を無から光に押し出す力を持っている。
僕の勇気は、夜につつまれたベッドの中で君を抱いている時に生まれる。
日が昇る頃になると、僕はその勇気をたずさえて外に出る。
これほど簡単な事はない。これほど難しい事もない。僕はその勇気を、この夜に囲まれたこの世界で探している。手がかり、地図、南に飛ぶ鳥たち。そして日が昇ると、私たちは服を着て、外に行く。
頭を並べて、彼女と私は普通に夢を受ける状態にいる。でも、見る夢は普通ではない。月の記号の言葉は半分しか聞こえない。アステカの人々は、月が太陽の神様への道を教えてくれると、信じていた。暗闇の道が光の道につながる。記号は言葉につながる。
そうなるだろうか?一緒に眠りたい!君が言葉にできない事を知りたい!

Reki:
そして、朝になった。僕は新聞を買いに行った。そして、アパートに戻って、コーヒーを作りにキッチンに行った。寝室にカップを持って行こうとした時に、気がついた。寝室がないという事に。部屋が一つ、なくなっているのだ。
君の名前を呼んだ。だれも答えなかった。
壁を見つめた。ドアがあったはずの壁を見つめた。そこから寝室へ行けるはずだった。
  うしろから音が聞こえた。家主だった。

Junzou: 『改装の工事を監督しに来た。手紙を見なかったのか?』
Reki:
彼はそれを手に持っていた。僕はそれを読んだ。そこには、僕の寝室を別の部屋にすると書いてあった。寝室は必要条件からは余分の物になっていた。もはや古風で、時代遅れ。まるで、スーパーのある時代に、野菜の配給があるようなものだ。贅沢(ぜいたく)だ。僕にはそんな余裕がないはずだ。

Reki:『でも、ここはワン・ベッドルーム・アパートのはずだ。』
Junzou:『キッチンも、ダイニングもあるじゃないか。他に何にが欲しい?』
Reki: 『ベッド・ルームが欲しい!』
彼は頭を横に振(ふ)った。信じられない。腹を立てていた。彼の後を追って外に出ると、数人の男たちが僕の戸棚だった場所に新しいドアを入れていた。歩道に大きなボックスが置いてあった。『衣類』と書いてあった。
『僕のベッドはどこだ?』
一人の職人が理屈ぽく僕に言った:

Yoshie: 『ベッドルームがなければ、ベッドは要らないだろう。』

Reki: 『どこにあるんだ?それから、ベッドにあった物はどこだ?』
横目で見る人、あざ笑う人、やじる人などがいた。彼らは肩をすくめた。
道路の角にあるパブに指を指しながら、一人が言った:

Junzou: 『ザ・マックベスに聞いてみたら?』

Reki: 僕は走って行ってみた。ザ・マックべスは24時間空いている安っぽいバーだ。ロクデナシの溜まり場。
しょんべんくさいビール飲み屋。
ドアを押し開けると、重低音が、拳のようにたたきつける。
そこに僕のベッドがあった。縛り上げられて、敗北の記念品。ナイフで切り刻まれた、からっぽのベッド。
『彼女はどこだ?』

いつか彼女を見つけられると思う。失った事さえなかったように。
時々波の音を透き通った夜に聴くと、彼女が僕の前を歩いているのが見えて来る。足跡さえも見える。
僕は話しの筋を失った世界に住んでいる。彼女は僕の手がかりだった。
眠ってみよう。夢を見られるかもしれない。

(夢のイメージ)
I Dream I Sleep   by Ayuo

I dream
Beside you
Inside you
I touch the corner
Of your eyes

I Sleep
Beside you
Inside you
The sea is in 
Your mouth

In the city of dreams
We drift in shadows
Planets in the sky
Surround me
Life longing for life

I turn
Beside you 
Inside you
  Embracing fingers
  In the Sun

  In the city of dreams
  We drift in shadows
  Planets in the sky
  Surround me
  Life longing for life

  Hold you
  Inside me
  Beside you