作詞


Rumi 2009年 memory theatre のコンサート・テキスト 言葉: 鮎生


Introduction to Rumi by Ayuo


こころはいつも家なき子
かなしいときはほほえんで
見知らぬ雲を追ってゆく
さすらいが 愛のはじまり

13世紀のイランにルーミという詩人がいた。
ルーミは体をひたすらぐるぐる回してゆく踊りを動く瞑想として作った。
この踊りの伝統は今でも続いている。
彼の作った集団メヴレヴィ・ダービッシュは、今でもこの音楽と踊りの伝統を続けている。
その踊りはどうやって作ったのか?

ある日、ルーミはトルコのコンヤという町の金属細工人が住んでいる地域を歩いていた。
そこでとても美しい音楽が聴こえてきた。
彼はその音楽を聴くと、ぐるぐると回り出した。
人の存在そのものが、エクスタシーの状態で宇宙の中へとけて行く。

重力に対して回ってゆく体。
回ってゆく微粒子。
回ってゆく流星。

宇宙の中心にある空白。
誰もが心の中で持っている白い世界。

細胞が持っている記憶。
微粒子が持っている記憶。

ダービッシュとは“扉”という意味。
人と神はエクスタシーの時に出会う。
スーフィーはエクスタシーの中での神性との合一を信じている者。

今夜はルーミの教え、マスナウィからの一つの物語を、ここで初めて日本語
に訳して、語りながら演奏します。

こころはいつも家なき子
かなしいときはほほえんで
見知らぬ雲を追ってゆく
さすらいが 愛のはじまり



力強さについて -  RUMI (翻訳:Ayuo)

Ayuo:
エジプトの王様の
身近にいる人が密やかに
王様に語った
『モスルの王様には
世界一美しい、おめかけさんがいる。
彼女はあまりにも美しく、口では表現出来ないほどだ。』
彼は彼女の絵を紙の上に描いた。

王様はそれを見て
自分の持っていたコップを落としてしまった。
王様はすぐにエジプト軍の指揮官に数千人の軍隊を連れて
モスルを攻撃した。
モスルは数週間も包囲され、
町の塔や壁はぐらぐらになり、
多くの死傷者が出た。
モスルの王様はつかいのものを出した。
『なぜ私たちを攻めるのです。
この町が欲しいのであれば、
あなたにあげます。
お金や宝石が欲しいのでしたら、
それは,なおさらもっと簡単な事です。』

エジプト軍の指揮官は女の人の絵が描かれた一枚の紙を取り出した。
これだ。
モスルの王様はすぐに言った
『彼女を連れ出してこい。偶像崇拝者に偶像をあたえろ。』

エジプト軍の指揮官は彼女を一目見て、
エジプト王と同じように恋心でいっぱいになった。
こういう事に笑う事はない。
こうした恋がなければ、
世界は進化しない。
物体は成熟に向かう愛の熱意によって
無機物から植物になり、
魂に恵まれた個性になってゆく。
これも無限の愛の一部。

この指揮官は夢を見た。
豊かに肥えた土を見ていた。
そこに種を植えた。
彼は彼女のイメージと恋にたわむれていた。
そして彼の精液はほとばしっていた。

しばらくたつと彼は起き上がってきた。
彼女がいないのに気がつく。
『自分の種を何もないところに出してしまった。
よし。このつかみところのない女を試させてみよう。』

自分の体の指揮官にさえもなれなく、
精液をこぼしてしまう者は
誉(ほま)れる者にはなれない。
彼はコントロールを全部失った。
エジプトの王に対する忠実心はもうどうでもよくなっていた。
死んでもいいと思うようになっていた。
『恋しいよ。恋しいよ。』と彼は語った。

熱出したまま行動するべきではなかった。
分別ある者と相談をするべきだった。
この指揮官にはそれが出来なかった。

彼のほれ込みようは彼を遠くに連れ去ってしまう、黒水の波。
井戸の暗闇からの存在しないものがファントムに見える。
そのファントムはたちまち強くなり、
本物のライオンさえも井戸に投げ込むようになる。

指揮官は王様のところにすぐには戻らなかった。
人里離れた草原にキャンプをした。
彼は燃えていて、空と地面の区別もつかなくなっていた。
彼の理性はドキドキする体のタイコの音の中でおぼれていた。
指揮官は役立たずの大根で王様はぶんぶん飛ぶ蚊。

さて、ちょうどこの耕作者(こうさくしゃ)が彼女の服をやぶって
押し倒す時、
外で大きな騒動。
テントの外にいる兵士たちの叫び声。
彼は裸のまま飛び出した。
刀を手に持って。

近くの沼地から黒いライオンが軍の馬を襲いに来てしまった。
カオス状態。
ライオンは20フィートも高く飛び、
テントは海の大波のようにうねっていた。

RAIN (指揮官とライオンの戦い)  –  鏡の踊り



鏡になった人。  RUMI  (訳:Ayuo) 

Yoshie:
鏡になった人
鏡になった人につばをかけるのは自分にかけるのと同じ。
鏡になった人の顔が醜く見えたら、それはあなたのもの。
イエス・キリストとマリア様をそこに見えたら、彼らはあなた。

自分自身が存在の奥に消えてしまって、落ち着いてしまった時。
人は鑑になる。

Reki:
私たちは鏡。
そしてその中にいる顔。
とわの内の一瞬をあじわっている。

Yoshie:
私たちはいたみ。
そしていたみのための療法。
私たちはつぼから流れる甘い、冷たい水。


Reki:
指揮官は一撃でライオンの頭を切り落とした。
そして女のテントに走って戻った。

Ayuo:
彼女の美しさ再び広げて見ると、
彼のペニスはさらに大きく勃起(ぼっき)した。

この戦い、この混合は、ライオンとのと似ていた。
彼のペニスは勃起したまま、
かすかな精液もまかなかった。
美しい人は彼の力強さに驚いていた。
すぐに、彼女は彼の気力と一緒になって、
二つの魂は一つとして二人から出て行った。

Reki:
二人がこのようにつながると、もう一人が
見えない世界から生まれる。
受精(じゅせい)がある場合は出産につながるかもしれない。
なくても、3つ目の存在が作られる。
二人が愛でつながった場合
あるいは、憎しみでつながった場合でも。
強烈な性質を持ったつながりは
見えない世界で新しい存在を生む。

そういう時になると気が付く。
連結すると子孫を残す。
だから、気を付けなければいけない。
意識的に、
人と会いに行く前から、
子供の事も考えるべきだ。

その子供たちと一緒に生きて、面倒を見る事になる。
感情が人と一緒になると、
形と表現する言葉と
住む場所を必要とする存在が生まれる。
あの子たちが泣いているよ。
『忘れたの。戻ってきて。』
気をつけよう。
一緒になると霊的な結果が生まれる。

まよっている こども   By Ayuo

まよっている こども
夢の中 で会う
遊ぶ 君と

夢では 時はない
変わらない 子供のまま
ここにいるよ

まよっている こどもの
一人は 僕かな?
遊ぶ 君と

見ると今
ここにいる
変わらない この場所
ここにいるよ


Yoshie:
指揮官は霊的な事があまり分からなかった。
彼はバターミルク用のつぼにおちた蚊のようにくっついていた。
彼は自分自身の恋心だけに夢中だった。
と思うと、彼が恋におちた早さと同じ早さで突然興味を失ったようだった。
『王様に言うなよ。』と冷たく言って王様の所に連れて行った。
彼女は王様が想像していたよりも百倍美しかった。


エジプトの王様はこの女の人に大きく恋をしていた。
彼の王国も彼の目の前からはカミナリの如く消えていた。
どんなに愛していても、
自分の持っている物が消えるのであれば、
それは夢だ。虚栄心を満たしているだけのものだ。
それはヒゲの間から吹かれる息。

初めて愛の物語を聞いた時から、  RUMI (訳:Ayuo)

Reki:
初めて愛の物語を聞いた時から、
君を探していた。
何も見えていなかった。

愛する者同士はどこかでやっと会えるのではない。
お互いの中に初めから存在している。

Yoshie:
『普遍的なものはこの世にない』という人がいる。
そうだろうか?こういった人はよく言う:
『今見えている以外の現実が存在するのであれば、
私にも見えたはずだ。』

子供に理屈が通じないと言って、
理論的に話す事をあきらめるだろうか?
理性をもった人が宇宙に愛の存在を感じなくても、
そこに何もないという事にならない。

Reki:
ヨーセフの兄弟たちにヨーセフの美しさが見えなかった。
でもヤコブはそれを失わなかった。
モーゼに木で出来た杖に見えたものは、
他の人に毒蛇に見えていた。
心の中で知っているものと目に見えるものが矛盾する場合がある。
モーゼの手は手でありながら、光ガ出る源でもあった。

こうした事は、無限も現実にあると同じように、あると思うが、
性器や消化器官の現実しか見えない人にとっては
これは宗教的な妄想にしか見えない。
そういう人に自分の内側に見えない友達がいるなどと言うのではないよ。
彼らには彼らの教会がある。
また、こういう人とは別に、
性欲や飢えは色あせてゆく表象と感じている人もいる。
そういうところに見えない友達が常にいたりしている。
私たちには私たちの場所がある。
信じない人に長く話しかけてもしょうがない。


Ayuo:
エジプトの王様はこの美しい女性の体の中に入ろうと思い、
彼女のところにやって来た。

彼の記憶は自分のペニスを上げていった。
彼の頭の中はペニスを下に押したり、上に上げたりする、
楽しみで一杯だった。

しかし、彼がこの女性と寝ようとした時、
神のお告げが聴こえた。
それはすごく小さな音だった、
ねずみのような音だった。
彼のペニスはしぼんで、欲望も去っていった。

彼にはそのささやく音は蛇が
わらのマットから立ち上がる音に聴こえた。
彼女は彼のしぼんでゆく物を見て、
笑い出した。
彼女は指揮官がライオンを殺した時にも、
彼のペニスはまっすぐ立っていた事を思い出した。

彼女の笑う声は大きく、長かった。
まるで大麻の入ったケーキを食べた人のように、
止める事が出来なくなった。
おかしくて、おかしくてしょうがなかった。

Reki:
あらゆる人間の感情には元になるものあって、
それを開けてしまう鍵もある。
王様は怒り出した。
刀を取り出した。
『何がそんなにおかしい。
考えている事を全て言え!
何もかくすな。
今私には嘘を見抜く力がある。
嘘をついたら、首をちょん切ってやる。
でも、本当の事を言ったら、自由にして上げよう。』

Ayuo:
彼はコーランの本を7冊も積み重ねて、
それに誓った。
彼女がやっと笑いを抑えきれるようになると、
彼女は全てを語りだした。
指揮官が人里のない草原に連れて行って、
テントを張って、キャンプをした事。
指揮官がライオンを殺して、
サイの角のように硬くなったペニスを出したまま、
テントに戻って来た事。

Yoshie:
それに比べて、王様の物は
ねずみのささやきがたった一つ聞こえただけで、
下がってしまった。
隠したものはどこかで出てくる。
悪い種をまくと、いつか現れる。
雨と太陽の熱がそれを空中に上げてくる。
春は木の葉が散った後に来る。
これが復活。
秘密は春になると出てくる。

Reki:
花の枝は種に見えない。
人は精液に見えない。
ブドウはその木に見えない。
愛の行動は全く別のものの種になる。
物事の起源は、それが向かって行く状態と別の状態にある。
私たち痛みはどこから来るのか分からない。
私たちがおこなった全ての事も分からない。
それは分からないままの方が良いのかもしれない。
と言え、それによって苦しむ事も多い。

Ayuo:
王様の頭ははっきりしてきた。
『自分の力に酔っていた為に、この女性を他の人から取ってしまった。
だから、当然、私の戸に誰かが叩きに来たのだ。』

『人を傷つける者は自分に同じ傷をまねく。
私の裏切りの結果、自分の友達が私を裏切る事になった。
これはどこかで止まらなければいけない。
君は指揮官の所に帰って良い。
私の他の妻が嫉妬をおこしたという言い訳をするから。
あの指揮官は君をモスルから連れて来るほどの勇気を持っているわけだから、
君は指揮官の妻になると良い。』

Reki:
これこそが予言者モハメッドの力強さ。

指揮官のリビドの強烈さは
王様の気高さに比べると
皮のように薄い。
王様はこうして
秘密と恨みを報いる
肉欲の種をまくサイクルを止めた。

人間の内面はジャングル  RUMI  (訳:Ayuo) 

Yoshie:
人間の内面はジャングル。
時々狼が支配している。
また、別の時はイノシシが支配する。
呼吸する時も気を付けていよう。

ある瞬間、ヨーセフのようなやさしさや思いやりががつたわる事もあれば、
次の瞬間に隠された悪徳な部分が動き出す事もある。

知恵は牛になって、眠る。
荒馬は突然おとなしくなって、おちつく。

熊が踊り出す。
ヤギがひざまずく。

サーカス